成年後見人の費用は誰が払う?報酬シミュレーター付
親が認知症になり、実家を売却して施設入居の費用に充てようとした矢先、「成年後見人をつけないと家は売れません」と不動産会社や銀行に言われ、戸惑うご家族は非常に多いです。本記事では、後見人制度の最大のネックとも言える「費用の負担者」と、複雑な「手続きの期間」について、現場の実例を交えて詳しく解説します。
【この記事の結論】
成年後見人の費用は「被後見人(親など、支援を受ける本人)の財産」から支払われるのが原則です。親の預貯金が少ない場合でも、家族が勝手に支払いを免れることはできません。まずは本人の財産額から、どれくらいの月額報酬が発生するのかを把握することが第一歩です。
成年後見人の費用は誰が払うのか?
成年後見人制度を利用する際、もっともトラブルになりやすいのが「お金」の問題です。初期費用から継続的な月額報酬まで、誰がどのように負担するのかを明確にしておきましょう。
1. 申し立てにかかる「初期費用」は申立人
家庭裁判所へ成年後見開始の審判を申し立てる際にかかる費用(収入印紙、郵便切手代、戸籍謄本などの取得費用、医師の鑑定費用など)は、原則として「申立人(多くは子供などの親族)」が負担します。
ただし、家庭裁判所に「本人負担としてほしい」と上申することで、事後的に本人の財産から精算できるケースもあります。しかし、必ず認められるわけではないため、最初は申立人が立て替える覚悟が必要です。
2. 後見人への「月額報酬」は本人の財産から
親族以外の第三者(弁護士や司法書士などの専門家)が成年後見人に選任された場合、彼らに支払う報酬は「被後見人(本人)の財産」から支払われます。子供が親の代わりに支払う必要はありません。
現場のリアル:親の預金が尽きたらどうなる?
実務でよくあるのが、「親の預貯金が底をついた場合、報酬はどうなるのか」という相談です。本人の財産がなくなったからといって、後見人を辞めさせることはできません。財産が著しく減少した場合、家庭裁判所の判断により報酬が減額されるか、無報酬になるケースが一般的ですが、制度を途中でやめることは原則不可能です。だからこそ、不動産という大きな資産をどう扱うか(売却するか維持するか)が極めて重要になります。
成年後見制度・生涯コスト計算システム
※家庭裁判所の基準に基づき、個別条件から将来の財産目減り額を動的に算出します。
成年後見人の手続きと期間について
「実家を早く売却して、親の施設費用に充てたい」と焦るご家族にとって、成年後見人の手続きにかかる「期間」は非常に大きな障壁となります。
申し立てから後見人選任までの期間は「約1〜3ヶ月」
家庭裁判所に必要書類を提出し、面接を経て、実際に後見人が選任されるまでには、通常1〜3ヶ月程度かかります。書類に不備があったり、親族間で後見人の選任について争いがあったりすると、半年以上かかることも珍しくありません。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1. 準備 | 戸籍謄本、医師の診断書(鑑定書)、財産目録の収集 | 約2週間〜1ヶ月 |
| 2. 申し立て | 管轄の家庭裁判所へ書類提出 | 1日 |
| 3. 審判・選任 | 裁判所での面接(調査官調査)、後見人の決定 | 約1ヶ月〜2ヶ月 |
| 4. 業務開始 | 財産目録の提出、口座の凍結解除・名義変更 | 選任後1ヶ月以内 |
居住用不動産の売却にはさらに時間がかかる
実務において一番のネックは、親が住んでいた実家(居住用不動産)を売却する場合です。成年後見人が選任されたからといって、すぐに不動産を売れるわけではありません。
居住用不動産を処分(売却や解体)するには、さらに「家庭裁判所の許可(居住用不動産処分許可)」が必要です。この許可が下りるまでに1〜2ヶ月かかることが多く、「良い買い手が見つかっていたのに、裁判所の許可待ちで契約が流れてしまった」という失敗談は枚挙にいとまがありません。
「月額報酬を払いたくないから、自分が後見人になる」と考えるご家族は多いですが、本人の財産額が多い場合や、親族間で意見の対立がある場合、家庭裁判所は高確率で第三者(弁護士・司法書士)を後見人に選任します。希望通りにいかないリスクを常に考慮して動く必要があります。
よくあるご質問(Q&A)
専門家後見人がついた後、途中で家族に交代することはできますか?
原則として、専門家後見人を家族の都合で解任したり交代したりすることはできません。後見人が横領などの不正行為を行った場合や、病気で職務を継続できない等の「正当な事由」がない限り、本人が亡くなるまでその専門家が後見人を務め、報酬が発生し続けます。
実家の売却が終わったら、成年後見制度を終了させることは可能ですか?
いいえ、終了できません。成年後見制度は「本人の判断能力が回復する」か「本人が死亡する」まで継続します。不動産売却という目的が達成された後も、残った現金の管理のために後見人はつき続けます。
「成年後見制度は一度始めると引き返せない『片道切符』です。不動産を売却するためだけに安易に申し立てる前に、他に方法がないか、専門家の目を入れることがご家族を守る第一歩です。」
— 古家診断コンサルタント